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福島の中小企業がAIで人を増やさず、できることを増やした半年の画像

福島の中小企業がAIで人を増やさず、できることを増やした半年

AIが仕事に使えるらしい、という話は何度も耳に入ってきます。ただ、では自分の会社で何をさせればいいのかは、誰も具体的に教えてくれません。

一度ChatGPTを開いてみたものの、何を打ち込めばいいのか分からずに閉じた。テレビやニュースで見るのは大企業や自治体の話ばかりで、うちのような規模に関係があるとは思えない。忙しいので、当面は今のやり方で困っていない。

そう感じているとしたら、それは遅れているのではなく、福島県で一番多い状態です。帝国データバンクの調査で、福島県内の企業が挙げた課題の1位は「活用すべき業務の範囲」、つまり何に使えばいいのか分からないという声で、54.5%にのぼりました。全国では同じ項目が3位(40.0%)なので、福島で特に強く出ている悩みです。

AIができることは、いまのところ3つに寄っている

「何ができるのか」の答えは、実は調査に出ています。福島県内で実際にAIを使っている企業が挙げた活用業務は、次の順でした。

半分以上が文章です。難しい技術の話ではなく、案内文を書く、長い資料を要約する、誤字を直す、といった作業に使われています。絵を描かせるとか、AIに経営判断を丸投げするといった話は、実務ではほとんど出てきません。

この記事は、AIの解説ではありません。福島県郡山市でTHE・中小企業を経営している私が、自社の業務と経営判断にAIを組み込んで半年ほど動かしてみた結果、何がうまくいって、何が失敗したのかをそのまま書いたものです。自治体の導入事例を読んでも自社の仕事に置き換えられない、という方に向けています。

出典: 帝国データバンク「福島県・生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」

福島県の企業の29.5%は、もうAIを使っている

福島県内企業のうち、生成AIを業務で活用しているのは29.5%です。全国平均の34.5%より5.0ポイント低いものの、約3割の企業がすでに使い始めています。「まだ早い」という感覚は、実態より少し遅れています。

帝国データバンクが2026年3月17日から31日にかけて実施した調査(福島県内270社が対象、有効回答132社)では、次の結果が出ています。

  • 生成AIを業務で活用している:29.5%
  • 活用している企業のうち、業務への効果が出ていると答えた割合:77.0%
  • 主な活用業務:文章の作成・要約・校正が56.4%で突出(前述)

同じ調査の全国版(全国23,349社が対象、有効回答10,312社)では、規模別の活用率も出ています。

大企業と小規模企業で18.5ポイントの差があります。この差は、資金力よりも「隣に使っている人がいるかどうか」で開いていると私は感じています。社内に一人も使い手がいない会社では、そもそも話題にすら上がりません。

出典: 帝国データバンク「福島県・生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」
出典: 帝国データバンク「生成AIに関する企業の動向調査(2026年3月)」

聞いてもピンとこないのは、たぶん相談する相手が違うから

福島県の企業の悩みの1位が「何に使えばいいか分からない」なのは、情報が足りないからではありません。説明してくれる人と、知りたいことがずれているからだと考えています。AIに詳しい人は「何ができるか」を話しますが、経営者が知りたいのは「何をやめられるか」「いくら変わるか」です。

数字で見ると、ずれの形がはっきりします。

全国では「活用すべき業務の範囲」は3位(40.0%)です。福島は14.5ポイント高く、順位も上。つまり福島の課題は、AIが怖いことではなく、使いどころが見えないことにあります。

出典: 上記2調査。福島県版の内訳(図表5「生成AIの活用における懸念・課題」)は、調査ページからダウンロードできるPDFに掲載されています

この差は、地方の中小企業の仕事の作られ方から説明がつきます。都市部の大企業は、業務が細かく分かれていて手順書もあるので「この工程をAIに」と切り出しやすい。一方、地方の中小企業は一人が何役もこなし、仕事の手順が個人の頭の中にあります。切り出す単位が最初から存在しないので、どこに入れればいいのか分からないという状態になります。

自治体の導入事例を読んでも、中小企業が動けない理由

「福島 AI」で検索すると、県庁や市役所の導入事例が並びます。私も一通り読みましたが、自社の仕事に置き換えられませんでした。理由は単純で、行政の事例は課題が最初から定義されているからです。中小企業の現場には、そもそも切り出せる形の業務が存在しません。だから参考にしづらいのは、読み手の理解力の問題ではありません。

行政の事例は、たとえば次のような形をしています。

  • 年間◯万件の申請書を処理している
  • そのうち手入力が◯割ある
  • そこにAI-OCRを入れて処理時間を減らした

これは、量が測れて、手順が決まっていて、担当が固定されている仕事です。中小企業の現場にある「見積書を書く」「電話で問い合わせに答える」「工事の写真を整理する」は、量も手順も担当もその日によって変わります。同じ引き算ができないので、読んでも自分の会社の絵が浮かびません。

だから中小企業がAIを入れるときは、行政と逆から入ることになります。大きな業務を選んで削るのではなく、すでに毎回同じことをやっている小さな作業を探すところから始めます。

私たちがAIに任せていること

弊社は福島県郡山市と仙台でホームページ制作やWeb広告の支援を行っていて、これまで全国で1000社を超える企業を支援してきました。私自身で言えば、軽くは使ってたものの今年から本気で取り組もうと決心して、半年ほどかけてAIを社内に入れました。主に任せている中身は現場の作業の自動化・半自動化経営判断の材料づくりになっています。特別なシステムを買ったわけではなく、既存の仕事にAIを差し込んだだけです。

現場で毎回同じ手順の作業

チリツモで圧迫する業務:
手を付ければ数分みたいな業務でも数が増えれば、とてつもない時間と労力、そして集中力が削がれてしまいます。そういった定型業務こそAIで解消していきました。

業務進捗や分析:
少人数の組織なので、メンバーの管理だけできるわけでもありません。日々の業務の中で現場が進捗しているかやパフォーマンスがひと目で分かり、問題の早期発見ができるダッシュボードで管理

テレアポの採点や教育:
録音を文字起こしし、自社のトークスクリプトに照らして採点させ、翌日に本人へ返す。以前は上司が時間のあるときに聞くだけで指導が属人的でしたが、いまは全通話が同じ基準で見られます

新規営業リストの作成:
国税庁が公開している新設法人のデータから、条件に合う会社を毎月自動で抽出する

自社サービスの開発:
公開している無料のAI検索診断ツールは、複数のAIに実際に質問を投げて、その会社が回答に登場するかを調べるもの。作る側もAIを使っています

などなど、細かいものもあげればキリがないのですが、ボトムアップではなくトップダウンでAI化に取り組んでいる最中です。

経営判断の材料づくり

こちらのほうが、経営者としては効きました。

毎月の数字を読ませて、異常だけ上げさせる:
全部の数字を眺めるのではなく、いつもと違う動きが出たときだけ手元に届く形にしています。締めを待たずに気づけます

新しいことを始める前に、前提が崩れる条件を先に洗わせる:
「うまくいく理由」ではなく「どうなったら失敗か」を先に列挙させます。これを人だけでやると、都合の良い気持ちが混ざります

施策の効果を検算させる:
「あれが効いたから良くなった」という自分の説明が、データと合っているかを確かめさせます共通しているのは、いずれももともと人が毎回同じ手順でやっていたことだという点です。逆に言えば、手順が毎回違う仕事はまだ任せられていません。

効果は「時間が浮いた」ではなく、支出で現れました

いちばん分かりやすく変わったのは、外に払っていたお金です。

これまで外部に発注していた制作作業を社内で回せるようにし、その工程の一部にAIを組み込みました。その結果、月々の支出が100万円単位で減り、年間では1,000万円以上下がっています。売上は同じ期間で落ちていません。

正直に書いておくと、この削減はAIだけの成果ではありません。社内で作れる体制を作ったこと、使うツールを見直したこと、そしてAIを入れたことが同時に効いています。AIの取り分だけを切り出した数字は、私たちも持っていません。「AIを入れたから年1,000万浮きます」と言う会社があれば、その内訳を聞いたほうがいいと思います。

それでも言えるのは、AI活用の効果は「作業が楽になった」よりも、外注していた仕事を自社に戻せる形で出やすいということです。中小企業にとっては、時間より支出のほうが先に効きます。

半年やって分かった、AIに任せてはいけないこと

失敗のほうも書いておきます。AIは、間違っているときでも堂々と完成品の顔をして出してきます。「分かりません」と言わずに、それらしい答えを作って返してくるので、受け取る側が確かめない限り誰も気づけません。ここを分かっていないと、静かに事故ります。

AIは「分かりません」と言わずに、それらしい答えを作る

弊社が作った診断ツールで、実際に起きたことがあります。外部のAIサービスへの問い合わせが全部失敗していたにもかかわらず、システムはエラーを出さず、正常な顔をしたレポートを返しました。中身は「引用元は0件」という、一見すると筋の通った内容です。

エラー画面が出ていれば誰でも気づきます。しかしそれらしく見える間違いは、誰も気づかないまま人の手に渡ります。これがAIを業務に入れるときの一番の怖さで、正確性への懸念が全国1位になるのも当然だと後から腑に落ちました。

だから「確認する係」を人が持つ

弊社では、AIが作ったものを別の仕組みで機械的に検査してから人に回すようにしています。ルールを文章で書いて「守ってください」とお願いする形では守られません。守れていないものが先に進めない形にして、初めて機能します。

任せられない仕事は、まだはっきりある

半年やって、次の3つは人が持つべきだと考えています。

  • 一次情報を取ること:AIが扱えるのは、すでにどこかに書かれた情報です。現場で見たこと、お客様が言った言葉は、人が取りに行くしかありません
  • 最終的な判断:AIは選択肢と根拠を並べるところまでは強いですが、責任を取れません
  • 確認していないことを確認したと言わない規律:これは人が仕組みで担保します

そして、ふと気づいた人もいるかも知れませんが、実はこれ人間でも同じことが起きていませんか?人間だろうがAIだろうが、仕事のミスは起きますし、都度指導をしていくことで、優秀な部下へと育っていくのです。

人が採れない未来に、AIで何が変わるか

ここからは私の見立てです。地方の中小企業にとって、AIの本当の意味は「作業が効率化される」ことではなく、人が採れないという最大の制約が外れることにあると考えています。地方で事業を伸ばせない理由は、需要がないことより、動かす人が足りないことのほうが多いからです。

まず、動かない事実から書きます。帝国データバンクの調査によれば、東北地方で正社員の不足を感じている企業は51.2%で、1月時点としては4年連続で半数を超えました(2026年1月・東北6県1,589社が対象、有効回答764社)。非正社員でも31.1%です。

  • 人手不足倒産は2025年に全国で427件(うち東北35件)発生し、3年連続で過去最多を更新した
  • 全国では年間で初めて400件を超えた
  • 調査には「業務はあるものの人手不足のためプロジェクトが進められない」という声が載っている

そして帝国データバンク自身が、東北について「従業員の高齢化に加え、人口減少が顕著で、若手人材の流出も深刻化していることから人手不足感は今後も高水準で推移するとみられる」と書いています。

つまり、待っていても解決しません。

出典: 帝国データバンク仙台支店「東北地方・人手不足に対する企業の動向調査(2026年1月)」2026年3月31日発表 
補足: 人手不足倒産の件数は、同レポートに参考として掲載されている全国の集計値です

「人が採れない」と「AIを使っていない」は、同じ会社に同居している

ここで最初のデータに戻ります。東北の半数の企業が正社員不足で、一方、福島でAIを使っている企業は29.5%です。人手が足りないと言っている会社と、AIを使っていない会社は、かなりの部分で同じ会社です。

弊社で実際に起きたのは、その入口にあたる変化でした。外注に出していた制作を社内に戻したとき、人を増やしていません。増やせなかった、というほうが正確です。専門性の高い人材は県内では簡単に見つかりませんし、仕事が増える見通しがないと採用にも踏み切れません。それでも、社内で回せる仕事の量は増えました。

これは「効率化」というより、採用できないことを前提にしても事業が回る形が見えたという話です。半年でそこまで来たので、この先さらに変わると考えています。

誤解のないように書きます。人を減らす話ではありません

「AIで人材難が解消される」は、いる人を切って穴を埋めるという意味ではありません。地方の中小企業が困っているのは、募集しても来ないことです。埋めるのは、その採れなかった穴のほうです。

AIで置き換わるのは、手順が決まっている作業です。逆に、お客様の話を聞いて何が本当の困りごとかを見つける仕事、責任を持って決める仕事は、むしろ価値が上がります。人が手順仕事から降りて、人にしかできない仕事に時間を移す。これが起きている変化の中身だと捉えています。

半年あれば、ここまで変えられます

最後に、始め方を書きます。弊社が本気で使い始めたのは半年前です。特別な人材も、大きな投資も要りませんでした。必要だったのは、任せる仕事を1つ選んで、結果を数えながら続けたことだけです。逆に言えば、半年前に始めなかった会社との差は、この半年で開いています。

「もう遅い」「うちには専門の人がいない」「日々の業務で手一杯」。どれも私も思っていたことですが、半年前の弊社と今の弊社を比べると、始めなかった場合との差は、思っていたよりずっと大きくなりました。

最初の1つの選び方

毎週やっていて、間違えても致命傷にならない作業から選びます。効果が大きい業務から入ると、検証の負担が重くて続きません。

  1. 毎週・毎月、同じ手順でやっている作業を3つ書き出す(議事録の要約、問い合わせメールの返信文の下書き、報告書の清書など)
  2. そのうち、間違いに気づける作業を1つ選ぶ(自分が中身を知っている仕事なら、おかしい答えが出たときに分かります)
  3. 2週間、人がやった結果とAIがやった結果を並べて比べる
  4. 合っていた回数と外れた回数を数える(感覚で判断しない)
  5. 外れ方に癖があれば、指示の出し方を直す

この5つを1周すると、社内に「AIはここまでは任せられて、ここからは任せられない」という基準が1つ残ります。この基準こそが、福島県の企業の54.5%が欲しがっている「活用すべき業務の範囲」の答えです。外から答えをもらうものではなく、自分の会社の中で1つずつ作っていくものでした。

経営者の方には、もう1つ足すことをおすすめします。毎月自分が数字を見て判断していることを1つ選んで、同じようにAIにも読ませてみる。答えが一致していれば自信になりますし、食い違えば、そこに自分の思い込みが隠れています。

まとめ

東北の企業の51.2%が正社員不足で、その状態が4年続いています。人手不足倒産は3年連続で過去最多。しかも、この先も高水準が続くと調査機関自身が書いています。一方で、福島県内でAIを使っている企業は29.5%です。

この記事でお伝えしたかったのは3点です。

  • AIができることは、いまのところ文章まわりに寄っている(福島の活用業務の56.4%)。特別な技術の話ではない
  • 効果は作業時間より先に支出で出る。弊社は外注していた制作を社内に戻し、年間1,000万円以上の削減になった(AI単体の効果ではなく、体制とツールの見直しが同時に効いています)
  • 地方にとってAIは効率化の道具ではなく、採れなかった人の穴を埋める手段になりうる

とはいえ、その最初の1つを自社で選ぶのが一番難しいところです。何を選べばいいのか、そもそも自社の業務のどこが手順仕事なのかは、外から見たほうが早く見つかります。

なにより経営の悩みは経営者に聞いたほうが早いと思います。弊社では平日17時から1時間、オンラインの無料相談(県内であれば来社もOK)を行っています。AI活用に関しては私が直接対応することで、どこからAIを活用していくかもお話しできますので、[無料オンライン相談]からお気軽にご相談ください。

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